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ベジタブルガーデン
ワクチンについて

苗に使うワクチン ウイルス病からトマトを守る「ワクチン」とその予防接種
植物の病気の原因「ウイルス」
私たちが病気になるように、植物も病気にかかります。
ご存知でしたか?
道端や公園等で、草木の葉の色が変わったり、部分的に枯れていたりすることがありますね。そんな時は、病気にかかっているのです。

私たちヒトや動物は、細菌やウイルスにかかって病気になります。例えば、結核菌やコレラ菌、インフルエンザウイルス等。最近ではエイズウイルス等も有名ですね。

実は植物も同じように細菌や菌(カビ)、ウイルスに感染して病気になるのです。中でも厄介なのが植物ウイルスによる病気です。細菌や菌は農薬で殺せる場合が多いのですが、ウイルスは農薬や殺菌剤が効きません。

ここでは、そんなウイルス病からトマトを守るワクチンについてお話します。

主な植物ウイルス「タバコモザイクウイルス」
植物のウイルスにはどのようなものがあるのでしょうか。

最もメジャーなものにタバコモザイクウイルス(Tobacco Mosaic Virus;以下TMV)があります。現在は、ウイルスと言えば、動物に感染するインフルエンザやエイズ等が有名ですが、1892年に世界で初めてに見つかったウイルスは、植物ウイルスのTMVでした。

このTMVは、様々な植物に感染し、活性※1も強く、感染植物を枯らしてしまうことが多いウイルスです。文字どおりタバコにも感染し高温でも失活しないため、タバコを吸われる方の指にはTMVがあると言っても言い過ぎではありません。「え?大丈夫なの?」と思われるかもしれませんが心配はありません。植物のウイルスは動物には感染しませんし、逆も同じです。有史以来ヒトはタバコを吸っていますが、感染したという記録は残っていません。


※1 ウイルスは生物ではないので「生きる・死ぬ」とは言わずに、「活性がある・失活する」と言います。

もう一つの植物ウイルス「キュウリモザイクウイルス」
次にメジャーなウイルスは、キュウリモザイクウイルス(Cucumber Mosaic Virus:以下CMV)と言われるものです。このウイルスは体長1〜2mmほどのアブラムシによって媒介され、たくさんの植物に感染します。その範囲はウリ科、ナス科をはじめ、750種以上の植物にわたり、野菜や花など農作物にも多くみられます。
被害はTMVと同様に大きく、感染した植物は枯れてしまう場合も多くあります。

このウイルスを防ぐには、アブラムシが植物に付かないように周りを囲ったり、農薬を撒いて殺虫するのですが、手間の割には効果が少なく、農薬をあまり使いたくない農家にとっても有効ではありません。そんなわけでCMVに泣かされている農家の方は本当にたくさんいらっしゃいます。
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対抗性遺伝子を作物に組み込み病気を防ぐTMV
植物はすぐに病気にかかってしまうのでしょうか。

実はすべてがそうとは限りません。一部の植物には、自分の遺伝子(DNA)の中に抵抗性遺伝子を持っている植物がいます。抵抗性遺伝子は色々あり、特定の菌や細菌にかかりにくい遺伝子や、虫が寄りつきにくい遺伝子など様々です。 これらは、古代からの長い年月の間に突然変異等によって一部の植物が獲得した性質でした。しかしヒトは早くからこの性質を見抜き、安定な収穫を得るため交配をくり返しながら、抵抗性遺伝子を持った病気に強い農作物を作ってきました。

ですから現在の農作物には様々な抵抗性遺伝子が入っているものが数多くあります。病原体の抵抗性遺伝子が入っている植物は、その病気にかかってもまず枯れることはなく、効果は抜群です。事実、TMVにはそれに対抗する抵抗性遺伝子が見つかっており、交配により、トマトをはじめとするいくつかの作物に入れられています。


対抗性遺伝子が見つかっていないCMV
しかしトマトの病気の原因の一つとして恐れられているCMVに対抗する抵抗性遺伝子は、残念ながら見つかっていません。ですからCMVによるトマトの被害は非常に大きくなっています。

このウイルス病を防ぐ手立てはないのでしょうか?
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ワクチン予防接種で防ぐCMVの発病
ヒトや動物のウイルス病を防ぐ方法としては、「ワクチン予防接種」を行います。皆さんもインフルエンザ等で一度は経験されたことがあるでしょう。
「ワクチン予防接種」は、身体が外部から病原体などの異物が入ると「抗体」と呼ばれるものを作り、抗体が身体の抵抗力(免疫力)を高め、病気にかかりにくくする原理を利用しています。

実際には、感染する危険のある病原体と同じ種類で「病原性を失った」もしくは「すごく弱い病原体」をあらかじめ身体に入れます。すると身体の中でこの種類の病原体に対する抗体が作られ、あとから病原性の強い病原体が入ってきても、免疫力が高くなっているので感染しにくくなるのです。

日本デルモンテでは、ワクチンとは少し原理が違いますが、同じように予防接種という形を用いて、ウイルス病を防除する方法をトマトの栽培に利用することにしました。これはあらかじめ植物に病原性の弱い「弱毒CMV」を接種して、あとから感染しようとする強いCMVを防ごうというものです。
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弱毒CMVによる病気防除のメカニズム
キュウリモザイクウイルス(CMV)は、直径約30nm(1/33,333mm)の球形のウイルスです。粒子の中に遺伝子としてRNAという成分を4本持っています。※2しかし、CMVにも少しずつ種類の違うものがあり、中にはサテライトRNAと言われる第5のRNA成分を持つものもあります。一般にCMVは植物に感染すると植物細胞の中でRNA成分を増やし、新たに粒子を作って増えていきます。この時、サテライトRNAを持つCMVの場合、RNA成分のうちでもサテライトRNAが一番著しく増えます。

※2 RNA1〜4と言われます。
キュウリモザイクウイルス(CMV)の電子顕微鏡写真(×50,000)


キュウリモザイクウイルス(CMV)の粒子模式図 ※図は模式図ですので、実際のCMVとは異なります。

キュウリモザイクウイルスの感染と弱毒のメカニズム

この性質を利用し、植物にサテライトRNAを持つ弱毒なCMVを先に予防接種するのです。すると、あとからアブラムシによって強毒のCMVが伝染され植物体内に入っても、それら強毒のRNA成分1〜4は先に爆発的に増えている弱毒のサテライトRNAとの競争(RNAをつくる酵素を利用する競争)に敗れてしまいます。そのため、あとからの強毒CMVはRNAも十分に合成できず、増えることができなくなり、結果、ウイルス病は起らなくなります。
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苗の生産と販売
弱毒CMVワクチン苗の接種工程 ※図はイメージ図のため、実際の形・大きさとは異なります。

本来のワクチンと原理は異なりますが、予防接種により同じような効果が得られることから、日本デルモンテでは予防接種源であるサテライトRNAをもった弱毒CMVのことを便宜上、「弱毒CMVワクチン」と呼び、開発に取り組んでいます。
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